これは2012年11月に書いたブログです。
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眠ったふりをすること、みなさんは何て言いますか?
うちのあたりでは「うそ眠」 (うそね)って言っています。
父が大けがをして当時5歳の私はしばらく、親せきに転々と預けられていました。
農家の叔父の家では朝早くから働いているので、昼食がすむと昼寝をします。
座敷に枕を並べて眠るのですが、いとこ達はそんな退屈な時間をじっとしてるはずもなく、こっそり起き出して庭を遊び回ります。
でも預けられるとき、母からくれぐれも叔父さん達の言うことを聞くようにと言いつけられていた私は、遊びたくても頑なに言いつけを守らねばと、叔父・叔母の間でうそ眠をしていました。
子供がうそ眠をすると、瞼がピクピク動き、おきているのがバレバレ。
それが何とも可愛いですが、私もそんな風にしながら恐ろしく退屈で長い時間をうそ眠をしてすごしていたんでしょうね。
ところで、入院中の母はもう身体はほとんど動かず、右目と唇が僅かに動く程度となってしまいました。
私はできるだけ病室に行って、蒸しタオルで身体を拭いたり、スポンジで口を洗ったり、時にはドライシャンプーで頭を洗ったりと何か少しでも楽にならないかと色々試しています。
ひとしきり終わったら、今日あったことや骨折による入院で完全に車いす生活になった父のことや3人の娘達のこと、母のあとを引き継いで私が事務長をしている障害者施設のメンバーのことや一緒にがんばった田んぼのことなど思いつく限り話します。
最近は話しているうちに母は眠り、それを相図に私は帰宅します。
私には妹がいて、彼女は母の唇の動きを読むのがとてもじょうずなのです。
昨日、病院の駐車場で妹と入れ違いになり、母が眠ったことを伝えて帰りました。
先ほどその妹から電話がありました。
お母さんは私が行ったら目をぱっちり開けてはったよ。
お兄ちゃんがお母さん眠ってるって言ってたで、と声をかけたら
『うそ』やて。
『つかれてる』て。
あんたが忙しい・忙しいてお母さんに言うから、気を使かって「うそ眠」してはるんや。
うそ眠して早く帰らしたろって思ってくれたはるんやわ…
母のうそ眠はピクリとも瞼を動かさず見事なものでした。
そんな身体になっても、50歳をすぎた息子を思っていただける母の優しさが、ありがたくまた申し訳くて涙がとまりません。
もう忙しいと言って気を遣わすまいと思う私なのでした。
今の私は余裕がなさ過ぎます。
ちょっと役を整理して時間をつくらんとあきません。
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今日、母の見舞いに行くといつも通りお湯で顔や手足をふきました。
すると久しぶりに目を開けてくれました。
数秒間でしたが私の顔が見えたのか、唇を震わせ涙が一筋、頬をながれて行きました。
先日来、私は友人から疲れた顔をしていると言われています。
せっかく久しぶりに私の顔を見てくれたのに、疲れた顔をして心配をかけたのではないかな。
見舞いに来るときは元気な顔で来てやろう。
「うそ眠」のブログを思い出しつつ、そう決意した私でした。