たまには不動産のお話を。
昔から売買契約の特約に必ずと言っていいほど使われてきた言葉、それが「現状有姿」取引です。
この売買の対象である土地・建物を現状のまま売買します。
もし物件に瑕疵(キズ)があっても売主さんは責任を負いませんよ…
そんな意味を込めて挿入されることが多い特約です。
最近はもっと明確に「本物件は現状有姿取引とし、売主の瑕疵担保責任を免除する。」と記載される場合も多いです。
これは売主さんにとっては便利な言葉ですよね。
ただし、一方的に売主さん有利に使うということもなく、契約交渉過程の価格交渉で値引きしたので、その代わりにこれ以上は文句言わんといてという意味で使われる事も多いのです。
そう聞くとこの特約を使いたくなる売主さんの気持ちもわかります。
ところで来年の4月1日から既存住宅現況検査(インスペクション)制度が始まります。
中古住宅(既存住宅)の基礎・壁・柱などの「構造耐力上主要な部分」や、屋根・外壁・開口部などの「雨水の浸入を防止する部分」を、建築士などの資格者が検査してくれるもの。
買主さんにとって買ってみないとわからない、ある意味ブラックボックスである中古住宅の状況をプロが調べて情報を開示してくれるものです。
従来も物件の現状を売主さんに告知いただいて雨漏りや建物の傾斜、給排水の状況などを文書でお知らせしています。
しかしプロが検査するという安心感が大きいですね。
既存住宅現況検査(インスペクション)は買主さんが安心して取引できる制度ですが、実施には若干問題もあります。
まず誰が費用を負担するのか。
費用負担は売主さんと買主さんかどちらが負担するかは決まっておらず、話し合って決めることとなります。
また、そもそも売主さんが拒否すれば既存住宅現況検査は実施できません。
初めて導入される制度なので今後、日本において定着するか否かは不明です。
しかし、全国で空き家が発生する中で、コストはかかるが安心して取引できるお家と、安いけれどもそうでないお家。
市場はどちらを選ぶでしょうか。
興味深いところです。
しかし少なくとも物件の情報を全く開示せずブラックボックスのまま売買して、後で瑕疵があっても知りませんという売り逃げに近いような現状有姿特約による売買は、市場から排除させるべきだし、またそうなると思います。