大阪で物件をご案内する道中、あるお家の前に設置してある売家の看板に目が止まりました。
最近の看板といえばプラスチック製のカラフルなものが多く、字体もいかにもプリントアウトしたと言わんばかりの文字ばかりです。
ところが、その看板は昔よくあったように白く塗り込めたブリキ板に、達筆の書家が書いたかのような文字で「売家 ○○不動産 電話○○番」と書かれています。
地味なのにそれがやけに目についてしまいました。
広告会社に勤める友人曰く、
画一化された広告は綺麗だが目立たない。
そこに自筆の文字を加えると、読み手の心に乱れが生じる。
その心の乱れをまねく工夫が、情報を目立たせる一つのテクニックなんだよ。
なんて話をしてくれました。
件の看板はそれを地でいくようなものでした。
売家といえば、こんな江戸川柳があります。
「売家と唐様で書く三代目」
初代・二位代目と苦労して築き上げた財産を、三代目が現を抜かし、とうとう立派な自宅も売る羽目となった。しかし、教養だけはつけてもらっているので、「売家」とかいた看板が、江戸時代に文人や儒学者などの間で流行した唐風の字体で書いてある。と言う意味だそうです。
仕事をしているとそんな三代目さんに出会うこともあります。
翻って、自分もまた三代目。
祖父が事業を始め、父が発展させ、私が継承しています。
うつつを抜かすことの無いよう、気を引き締めて頑張らねばとこの句を肝に銘じています。