おこずかい
もらうとうれしいものです。
子供の頃、父に竹で貯金箱を作ってもらいました。
貯金箱の上下は竹を節のところで切り、投入口は竹筒の横にノコギリで5ミリ位の間をあけて2つの切れ目を入れ、間の竹を取って作ります。
孟宗竹で作られた貯金箱はとても大きくて、なかなか貯まりませんでした。
せっせと貯めては竹筒を振り、どれくらい貯まったか確かめるのが楽しみでした。
ある日、父が職場で大ケガをして障害者となり、うちにお金がなくなりました。
母は野菜や椎茸の行商で家計を支えましたが、どうしてもお金が足りなかったのでしよう。
母はすまなそうに「貸してや。」と言って竹筒を割ってお金を持っていきました。
私は子供心に、本当に苦しいんだろうと思うと共に、貯金箱が母の役に立って本当によかったとおもいました。もう50年も前の話です。
昨日、契約が終わり父のところに報告にいきました。
契約ができたら僅かですがおこずかいを渡すのも恒例です。
家から出ることも減りましたが、好きなお酒やツマミを買ったり、孫にこずかいをやったり、母の病室に行くにも何か買っていきたいに違いないから、やはりお金は必要です。
そんな気持ちで手渡しました。
帰りにドアを閉めようとすると父の独り言が聞こえました。
「もったいのうて使えんわ。」
なんか胸が一杯になり、階段を降りながら泣けてきました。